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トマトジュースは本当に健康に良い?

[2025.09.14]

こんにちは、いとう内科クリニック院長の伊藤です。日常の診療で患者さんから質問があった、素朴な疑問についてお答えできればと思います。

登場人物

  • I先生:総合内科・循環器内科専門医。クリニックの院長。
  • 患者Pさん:生活習慣病で通院中。インターネットや健康食品の情報に詳しい。
  • 栄養士 T:クリニックで働く栄養士さん。食の専門家。オンライン栄養指導を担当

はじめに(クリニック外来の会話より)

患者P:「先生、最近“トマトジュースが体に良い”って聞きます。毎日飲めば血圧も下がるって本当ですか?」

I先生:「Pさん、こんにちは。良いテーマですね。トマトやトマトジュースには健康に役立つ成分が入っていますが、ポイントを押さえた“飲み方”と“注意点”があります。今日は管理栄養士のTさんと一緒に整理しましょう。」

管理栄養士T:「よろしくお願いします。ネット情報は玉石混交です。科学的な根拠に基づいて、わかりやすくお伝えしますね。

1. トマトジュースの“何が”体に良いの?

I先生:「代表選手は“リコピン”。強力な抗酸化作用があり、加熱・破砕された加工品(ジュース、ペースト、ソース)にすると体内への吸収が高まります。」

管理栄養士T:「他にも、ビタミンC、カリウム、食物繊維(ペクチン)、トマト特有の成分(フィトエン、フィトフルエン、エスキュレオシドAなど)も含まれます。“ジュース=丸ごとの栄養の液体版”というイメージでOKです。」

患者P:「生よりジュースの方が良いんですか?」

管理栄養士T:「“どちらが上”ではなく役割が違うと考えましょう。生はビタミンCや食感を楽しめ、ジュースやペーストはリコピン吸収が高いのが利点です。」

2. 吸収を最大化するコツ(これが“効く飲み方”)

I先生:「リコピンは脂溶性。脂質を含む食事と一緒に摂ると吸収が上がります。」

管理栄養士T:「具体例です。

  • 朝食の卵料理+オリーブオイルと一緒にコップ1杯(200mL)

  • イル入りドレッシングのサラダと一緒に

  • 小さじ2(約10g)の良質な油を使う料理に“合わせる”

※就寝直前の“単独飲み”は、胃食道逆流症(GERD)がある方では胸やけの誘発になり得るので避けましょう。」

患者P:「“朝が一番効く”って聞いたのですが?」

管理栄養士T:「“朝が絶対有利”という決定的根拠はありません。“食事(脂質)と一緒”が最優先。ライフスタイルに合わせて続けやすい時間でOKです。」

3. どれくらい飲めばいい?(適量の目安)

I先生:「まず“薬”ではなく“食品”という前提です。研究や栄養バランスを踏まえ、無塩のトマトジュース200mL/日を“上限の目安”にすると実用的です。」

管理栄養士T:「200mLの無塩タイプは、一般にエネルギー約36kcal、糖質約7g、カリウム約600mg前後、リコピン20mg前後が目安。毎日続けやすく、総摂取カロリーや糖質も管理しやすい量です。」

患者P:「もっとたくさん飲めば、早く効きますか?」

I先生:「“過ぎたるは及ばざるが如し”。多く飲むほど効果が直線的に増えるわけではありません。塩分やカリウム、糖質の取り過ぎリスクも出ます。」

4. 本当に血圧や脂質に効くの?

管理栄養士T:「“トマト(製品)全体”としてみると、血圧は軽度〜中等度の改善が示された研究があり、特に無塩トマトジュースを毎日飲んだ日本の調査では、高血圧・前高血圧の方で収縮期・拡張期ともに有意な低下が観察されています。LDLコレステロールの低下や血流改善を示す試験もあります。」

I先生:「一方で、“リコピン単体サプリ”では効果が一定しない報告もあります。食品としてトマトのマトリクス(複合成分)が働いている可能性があります。まとめると——

  • 無塩のトマトジュースを毎日200mL、脂質と一緒に。(無塩が大事!!)

  • 数週間〜数か月の継続で、血圧や脂質のわずかな改善が期待できることがある。

  • ただし個人差が大きく、“これだけで治療OK”ではありません。」

5. 病気・薬ごとの注意点(“やってはいけない飲み方”)

患者P:「私のように生活習慣病で通院している人が気をつけることは?」

管理栄養士T:「要点はここです。」

① 高血圧

  • 無塩タイプ必須。食塩入りは100gあたり食塩0.3g(200mLで約0.6g)前後と増えます。

  • 減塩目標(高血圧の方は1日6g未満)の範囲で。ジュース以外の食事の塩分にも注意。

② 糖尿病(血糖管理)

  • 無塩200mLで糖質約7g。炭水化物交換に含めれば基本OK。

  • 朝食や主食と一緒に摂れば血糖の“急上昇”を招きにくい傾向。甘味料入り製品は避ける。

③ 慢性腎臓病(CKD)・高カリウム血症の既往

  • 200mLでカリウム約600mg。腎機能が低下している方、またはACE阻害薬/ARB/カリウム保持性利尿薬(スピロノラクトン等)を使っている方は、先生と要相談。

  • 高カリウム(>5.0–5.5mEq/L目安)の既往がある方は量を制限または別の野菜に置換を。

④ 胃食道逆流症(GERD)・胃潰瘍

  • トマト由来の酸で胸やけが悪化することがあります。空腹時や就寝前は避け、少量から耐容性を確認。

⑤ アレルギー(花粉-食物アレルギー症候群など)

  • トマトは花粉(シラカバ、イネ科、ヒノキ等)との交差反応で口腔アレルギー症状を起こすことがあります。加熱品では症状が軽くなることも。違和感があれば中止しましょう

⑥ 抗凝固薬ワルファリン

  • トマトジュースのビタミンKは少量。“避ける”必要はなく、“毎日の摂取量を一定に保つ”のがコツ。

6. ラベルの読み方(買う前のワンチェック)

管理栄養士T:「棚の前で“ここだけ”見ればOKです。」

  • 表示1:『食塩無添加』(または食塩不使用) … 高血圧・むくみ対策の基本。

  • 表示2:栄養成分表示 … 200mLあたりエネルギー≤40kcal、糖質7〜8g前後、食塩相当量0〜0.1gを目安。

  • 表示3:原材料 … トマト/トマトジュース濃縮還元のみが理想。砂糖・甘味料・香料が入る製品は避ける。

7. まとめ

患者P:「結局、どう実践すればいいですか?」

I先生:「要点だけ。」

管理栄養士T:

  1. 無塩を選ぶ。

  2. 量は200mL/日までを基本に“毎日コツコツ”。生トマト中1個/日 or 無塩トマトジュース200mL/日

  3. 脂質を含む食事と一緒に(吸収◎)。

  4. 高血圧・腎機能低下・薬(ACE/ARB/スピロノラクトン等)の方は主治医に相談。

  5. GERDやアレルギーがある人は少量から、症状が出たら中止。

患者P:「無塩を200mL、朝食と一緒にですね。続けられそうです!」

I先生:「それが長続きのコツです。もちろん食事全体のバランスが土台。もっと自分のライフスタイルに合わせるならオンライン栄養指導で詳しく相談してみましょう。」

★付録:数値の“目安”早見表(無塩ジュース200mL)

  • エネルギー:約36kcal

  • 糖質:約7g

  • 食塩相当量:0〜0.02g程度

  • カリウム:約600mg

  • リコピン:約20mg前後(製品差あり)

※上記は代表的な無塩製品・公的成分表等からの一般的な“目安”。製品により前後します。ラベルで必ず確認してください。

ちょっとした食習慣の選び方が、将来の健康につながります。少しでもお役に立てれば幸いです。

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