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知ってますか?AppleWatchで睡眠時無呼吸症候群(SAS)をチェックする方法

[2025.04.13]

はじめに:AppleWatchが睡眠の“見える化”を実現

「ちゃんと寝ているのに疲れがとれない」「日中に異常な眠気がある」
こんな経験はありませんか?それはもしかしたら、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の兆候かもしれません。

しかし、SASは寝ている間の“いびき”や“呼吸の停止”が特徴的な病気であり、自分では気付きにくいのが最大の問題点です。特に一人暮らしの方や、家族と寝室を分けている方は、自分の睡眠中の様子を知る手段が限られています。

そこで今、注目されているのが「AppleWatch」です。
最新のAppleWatch(Series6以降)には、睡眠中の血中酸素濃度(SpO₂)の測定機能や、呼吸の乱れの通知機能が搭載されており、SASの早期発見に役立つツールとして注目されています。

睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?

SASとは、「SleepApneaSyndrome(スリープ・アプニア・シンドローム)」の略で、睡眠中に呼吸が止まる状態が何度も繰り返される病気です。

主なリスク

  • 酸素不足による脳卒中や心筋梗塞のリスク増加
  • 日中の集中力低下・居眠り事故の原因
  • 高血圧、糖尿病、脂質異常症など生活習慣病との関係

実際、日本には約900万人の潜在患者がいるとされながらも、治療を受けている人はわずか約70〜80万人にとどまると報告されています。

なぜ気づきにくいのか?一人暮らしの落とし穴

SASは“寝ている間のこと”なので、本人の自覚がないまま進行することが多い病気です。

家族と暮らしている人は「いびきがひどい」「呼吸が止まっていたよ」と指摘を受けることで気づけますが、一人暮らしの方は、誰にも気づかれないまま体調不良を抱え込んでしまうことがあります。

そんな時に役立つのが、AppleWatchです。自分の睡眠中の状態を記録し、異変を知らせてくれるのです。

SASの主な症状とチェックリスト

以下の項目に1つでも当てはまる方は、SASの可能性があります。

 睡眠中にいびきをかく
 家族に「呼吸が止まっていた」と言われたことがある
 起きたときに頭痛がある
 朝、口が乾いている
 睡眠時間は足りているのに、日中に強い眠気
 夜中に何度も起きる、トイレに行きたくなる
 若い頃より体重が増えた
 肥満、糖尿病、高血圧、脂肪肝のいずれかがある

AppleWatchは、これらの症状のうち、「いびき」や「呼吸の乱れ」「酸素の低下」といった項目に関して、日常的にモニタリングできます。

AppleWatchができること①:SpO₂(血中酸素飽和度)の測定

AppleWatchSeries6以降では、「血中酸素ウェルネスアプリ」が使えます。
これは、体の中の酸素の量(SpO₂)を測定する機能で、健康な人では95~100%の範囲にあります。

睡眠時無呼吸症候群の人では、無呼吸中にSpO₂が90%以下になることがあります。
特に重症のSASでは、70%台まで落ちることもあり、これは健康に非常に大きな影響を与えます。

AppleWatchはこのSpO₂の値を就寝中も自動で測定してくれるので、「知らないうちに酸素が足りていなかった」ということに気づくことができます。

AppleWatchができること②:呼吸の乱れの通知機能

AppleWatchSeries9、Series10、Ultra2では、watchOS11以降に対応した「睡眠時無呼吸の通知」機能が搭載されています。この機能は、睡眠中の呼吸の乱れの傾向を自動で分析し、30日間の評価をもとに異常があれば通知してくれるというものです。

呼吸の乱れとは?

AppleWatchは、加速度センサーやマイク、心拍センサーなどを活用して、就寝中の胸の動きや呼吸パターンを解析しています。
これにより、「呼吸が乱れている=無呼吸の兆候がある」かどうかが検知できるのです。

通知が届く条件

30日間の睡眠データを蓄積し、評価
「呼吸の乱れが高い」と評価される日が増えると、通知が届く
通知には、医療機関に提示できるPDFファイルも付属
睡眠時無呼吸が疑われる日時
睡眠時無呼吸についての説明資料
呼吸の乱れの記録(グラフ付き)
医師に見せるためのPDFレポート

この通知は、診断ではなくあくまで“兆候”の警告です。重要なのは、この通知を受け取ったら、迷わず医療機関に相談することです。

AppleWatchでSASをチェックする手順

AppleWatchとiPhoneの連携設定が整っていれば、誰でも簡単にSASチェック機能を使うことができます。

設定方法(通知機能のオン)

1.iPhoneで「ヘルスケアアプリ」を開く
2.画面右上のプロフィール写真をタップ
3.「ヘルスケアチェックリスト」をタップ
4.「睡眠時無呼吸の通知」を探し、「設定」をタップ
5.表示されるガイダンスに従って設定を完了

これで、AppleWatchが就寝中に呼吸の乱れを計測し、異常があれば通知を出すようになります。

測定中の注意点

AppleWatchは手首にフィットするように装着
寝る前に十分に充電しておく(最低30%以上推奨)
「睡眠モード」や「おやすみモード」がオンになっていることを確認
最低6時間以上の就寝を推奨(正確なデータ取得のため)

AppleWatchを使う上での注意点

AppleWatchは医療機器ではありません

AppleWatchは、医療機器のように診断や治療を目的としたものではありません。
通知機能やデータを通じて、「SASかもしれない」という兆候を察知するための補助的なツールです。確定診断には、医療機関での専門検査が必須です。

睡眠時無呼吸の通知は18歳未満は非対応

この通知機能は、18歳未満のユーザー向けには設計されていません。
子どもにSASの疑いがある場合は、小児科や耳鼻咽喉科などの専門医に相談することが推奨されます。

医療機関の受診が必要なサインとは?

以下の症状がある場合、AppleWatchの通知の有無にかかわらず、一度受診して検査することをおすすめします。

 朝起きたときに頭が重い、頭痛がする
 起床時に口が乾いている
 日中の眠気がひどく、仕事・勉強に支障が出る
 夜間に何度も目が覚める、寝汗をかく
 AppleWatchでSpO₂が90%を下回る日が続いている
☑ 「呼吸の乱れが高い」という通知を受け取った

SASは放置すると、高血圧・心筋梗塞・脳卒中・糖尿病など重大な合併症に繋がる可能性があります。
一度の通知で慌てる必要はありませんが、繰り返し通知が届く場合は受診を躊躇せず行動しましょう。

よくある質問(FAQ)

Q1.AppleWatchですべてのSASがわかりますか?

A.いいえ。AppleWatchはSASの兆候を知らせるもので、正式な診断は検査が必要です。

Q2.呼吸の乱れが「高い」と通知されました。どうすればいい?

A.睡眠時無呼吸症候群の検査や治療をしているクリニックを受診しましょう。PDFレポートを医師に見せると役立ちます。

Q3.Series5でも使えますか?

A.呼吸の乱れ通知はSeries9以降、血中酸素濃度測定はSeries6以降で対応しています。

Q4.通知はどのくらいで届きますか?

A.通常、30日間の睡眠データを分析してから評価されます。

Q5.子どもにも使えますか?

A.Appleは18歳未満への使用は推奨していません。小児は医師の診察が第一です。

Q6.通知を受け取ったら必ず病院に行くべき?

A.「呼吸の乱れが高い」が複数回続く場合は受診をおすすめします。早めの確認が安心です。

Q7.AppleWatchのデータは病院で使える?

A.はい、PDF形式でデータを提出でき、診察時の参考情報になります。

Q8.CPAP治療が必要になったら?

A.医師の判断により、持続陽圧呼吸療法(CPAP)やマウスピース療法が導入される場合があります。

Q9.アプリでいびきも録音できますか?

A.はい、「いびきラボ」「SnoreClock」など無料アプリで録音が可能です。

Q10.AppleWatchを使うと睡眠の質は良くなりますか?

A. 睡眠の質そのものを改善するわけではありません。問題の早期発見と治療により生活改善の可能性が高くなります。

Q11.自宅の簡易検査だけで診断できますか?

A.簡易検査で一定の指標(AHIが高いなど)が出た場合、そのまま治療方針が決まることもありますが、必要に応じて精密検査が追加されます。当院ではCPAP治療の有効性を評価するためにも、精密検査の追加をお勧めいたします。

Q12.精密検査は保険適用されますか?

A.はい、医師が必要と判断した場合は保険が適用されます(通常3割負担)。

Q13.CPAP治療ってつらくない?

A.最初は違和感がありますが、1〜2週間で慣れる方がほとんどです。夜ぐっすり眠れるようになったと実感する方が多いです。

Q14.治療でSASは完治しますか?

A.CPAPは症状をコントロールする治療法であり、完治するものではありませんが、健康を保つには非常に効果的です。

Q15.口腔内装置はどこで作ってもらえますか?

A.医療機関でSASの診断を受けた後、適応があれば連携医療機関で作製してもらいます(保険適用あり)。

Q16.自分のAppleWatchが通知機能に対応しているか知るには?

A.Apple公式の互換性ページで確認することができます。

Q17.ダイエットだけでSASは改善しますか?

A.軽度の場合は減量のみで改善するケースもあります。ただし中等度以上はCPAPなどの医療的介入が有効です。

最後に

睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、自覚しにくく見落とされがちな病気ですが、放っておくと重篤な生活習慣病や突然死のリスクにもつながる恐れがあります。

そんな中、AppleWatchのようなウェアラブル端末を活用することで、自宅にいながら自分の睡眠や呼吸状態を可視化できる時代が到来しています。

「いびきをかいているかも」「最近、眠っても疲れがとれない」
そんなあなたは、まずはAppleWatchでセルフチェックから始めてみてください。
兆候があれば、迷わずクリニックへ相談してください。

【出典】
[日本呼吸器学会「睡眠時無呼吸症候群の診療ガイドライン」]
(https://www.jrs.or.jp/modules/publication/index.php?content_id=28)
[血中酸素ウェルネスについて(Apple公式)]
(https://support.apple.com/ja-jp/HT211027)
[Apple公式|睡眠時無呼吸の通知について]
(https://support.apple.com/ja-jp/HT214042)

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