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不整脈の診断・検査・治療

不整脈の診断・検査・治療

心臓の病気はたくさんありますが、僕は大きく5つに分けて説明することが多いです。

  1. 冠動脈疾患
  2. 心臓弁膜症
  3. 不整脈
  4. 心筋症
  5. 心不全

このページは3の不整脈について説明いたします。

不整脈とは?

診察中に『脈は整っていますね。大丈夫ですよ』と言われることがあると思います。規則正しい脈=脈が『整っている』状態が『整脈』

一方『不整脈』は『不整脈』と書いている通り『脈』が『整ってない』=脈が乱れている状態です。

不整脈の症状

不整脈の種類や患者さん毎に症状の感じ方は異なります。不整脈をお持ちでも無症状の方もたくさんおられます。

・脈が遅い(徐脈)ことによって生じる症状

動いた時の息切れや胸部不快感。目の前が暗くなるタイプのめまい(眼前暗黒感)・失神。心不全

・脈が早い(頻脈)ことによって生じる症状

動悸・胸痛・胸部違和感・冷汗を伴う動悸・失神。心不全

心房細動という不整脈は『脳梗塞』の原因の一つと言われています。

 

検査方法

クリニックを受診されるパターンは大きく2つあります。

A:症状を認めるので受診

B:症状は無いが健康診断で不整脈を指摘されて受診

症状を認めるため受診された方は、『症状と不整脈が一致しているかどうか』を確認することが必要です。不整脈はたくさん種類があるため、治療が必要な不整脈かどうかを判断します。また検査の結果、不整脈と症状が関係ないこともあり、『不整脈を心配しなくて良い』という安心を提供することも大切に思っています。

症状がない方は『指摘された不整脈の種類』によって検査の必要性をお話しさせていただきます。

検査項目

目的

方法

12誘導心電図

心臓全般の電気の流れを確認します。

使用目的:心筋症・心筋梗塞などの不整脈の原因となる疾患や遺伝性不整脈疾患の診断

健康診断でも行われています。

胸と手足に電極をつけて短時間(30秒ほど)の記録を行います。

ホルター心電図

※    従来型

※※ Heart note

不整脈を調べる時に行います。

使用目的:症状の有無によらず、発作性の不整脈の診断。

心電図の機械をつけて帰宅していただきます。

1日の脈を記録することができます。

血液検査

貧血やホルモンなど不整脈の原因となる

病気が無いか調べます。

採血

 

・12誘導心電図

健診でも使用されている一般的な検査です。

 

 

 

 

 

 

 

 

胸と手足に電極をつけて検査をします。30秒ほど記録を行います。心臓の筋肉を伝わる電気刺激を確認します。健診で指摘される右脚ブロックや左脚ブロックなどがわかります。

・ホルター心電図(24時間測定)
A:従来型

 

 

 

 

 

 

 

 

機械を装着して1日の脈拍を記録します。入浴などはできないなどのデメリットはありますが、メリットは解析結果に異常があれば至急報告が入ります。

本体は貸し出しになりますので、翌日(休診日は翌々日)に本体の返却をお願いします。

B:Heart note

 

 

 

 

正面図

 

 

横から見た図

大きさ 30mm×100mm 薄さ5mm 重量12g貼るだけのホルター心電図計です

 

(J S R株式会社パンフレットより抜粋)

JSR社と国立循環器病研究センター病院・研究所が共同で開発した貼るだけ・コードレスのホルター心電図計です。半身浴・シャワーが可能で患者さんの負担軽減が見込まれます。

検査結果に関してはJSR株式会社(販売元)へレターパックで郵送後から解析となりますので、従来型より少しお時間をいただくことがあります。

・返却方法:クリニックで外して郵送も可能ですし、患者さんご自身でご自宅から郵送も可能です(検査時に返却方法はご相談下さい)

 

ホルター心電図で評価する不整脈の種類

 

症状

治療方法

徐脈性不整脈

心不全・失神

①    ペースメーカー移植術(症状があれば)

上室期外収縮

動悸

①    経過観察/薬物療法

心室期外収縮

動悸・頻度が多いと心機能低下

①    経過観察/薬物療法

※基礎心疾患の確認が必要

発作性上室頻拍

動悸・失神

①    カテーテルアブレーション(根治の可能性あり)

②    経過観察/薬物療法

心房細動

動悸・失神・心不全・脳梗塞など

①    カテーテルアブレーション

②    薬物療法

・塞栓症予防

・不整脈治療

心房頻拍

動悸・失神・心不全

①    薬物治療

②    カテーテルアブレーション

心房粗動

動悸・失神・心不全

①    カテーテルアブレーション

②    薬物療法

・塞栓症予防(年間3%)

・不整脈治療

心室頻拍

動悸・失神・心不全

救急受診要

多形性心室頻拍

動悸・失神・心不全

救急受診要

心室細動・無脈性心室頻拍

突然死

救急受診要

 

心房細動

心房の至るところから刺激が生じて心房が小刻みに震えている状態です。

心房が小刻みに震えているため、心臓に負担がかかりやすい状態になります。

心房細動の分類

心房細動の治療

心房細動治療の軸は2つあります。

  • 脈拍のコントロール

A:洞調律維持:心房細動がおこらないようにすること。抗不整脈薬やカテーテルアブレーション治療

B:脈拍数を管理:投薬により脈拍数をコントロールすること。徐脈(脈が少ない)を認める時はペースメーカー移植術が必要となることがあります。

  • 塞栓症予防

心房細動が注目されるのは脳梗塞などの原因とされています。予防として抗凝固療法が必要です。

☆心房細動の発見が重要な理由

心房細動は「心不全・脳卒中による心血管死」「脳梗塞:全脳梗塞の20~30%が心房細動由来」「入院の原因:心房細動患者の10~40%が毎年入院」などが報告されています(Kirchhof P,et al.2016 Euro Heart J 2016;37:2893-2962)。

そんな病気だが『心房細動患者 3749人中1971人(52.6%)が無症候性だった』と日本の研究報告があります。(Fushimi AF registry)

ちなみに過去に著名人が脳梗塞になった原因の不整脈です。

何故塞栓症を起こす?

血液は流れているとサラサラしていますが、流れが滞ると固まる性質があります(鼻出血を想像してみてください。最初は液体ですが、外に出て流れが滞ると固まりますね)。

心房細動は心房収縮機能低下と心房拡大が左房内での血液のうっ滞をきたすため心臓の中に血液の塊(血栓)を作ることがあります。心臓の中にできた血栓なので、血液の流れに沿って全身至るところに流れ着く可能性があります。頭の血管に血栓が飛んでいく=詰まる・栓をすると『脳梗塞:脳を栄養する血管が詰まるため、脳細胞が栄養不足で壊死(梗塞)』を起こします。他にも心臓を栄養する血管(冠動脈)に詰まれば『心筋梗塞』、腎臓を栄養する血管に詰まると『腎梗塞(非常につよい背部痛)』、下肢動脈に詰まると『下肢急性動脈閉塞(閉塞した足の非常に強い痛み・色が蒼白(血流なくなるため真っ白)など)』といった『血栓塞栓症』を引き起こします。血栓塞栓症を予防するために『抗凝固薬』の内服を提案します。

抗凝固療法の選択について〜『メリット・デメリット』

メリット:血栓塞栓症の予防

『心原性脳梗塞』と言われる血栓塞栓症は血栓が脳を栄養する血管に詰まることで生じるため、詰まった部位によっては非常に大きな脳梗塞となります。抗凝固薬を内服することで心原性脳梗塞発症の可能性を低減することが期待できます。

デメリット:出血リスクの増加

抗凝固薬は血液をサラサラにすることで血栓(血の塊)が出来にくくするお薬です。

一方、出血した場合に血が止まりにくくなるため出血性疾患の危険性が高まります。

患者さん毎に『予防のメリット』・『出血のリスク』は異なります。

当院では投与に関してはまず投与の必要性を検討します。

投与が必要と判断した場合『CHADS2 Score』と「HAS-BLED Score」を使用して

メリット・デメリットを判断いたします。

CHADS2 Score とCHA2Ds2-VASc Scoreについて

専門的な話になりますが、メリットの評価方法は2種類あります。

 

使用ガイドライン

評価項目

CHADS2 Score

日本のガイドライン

5項目

CHA2Ds2-VASc Score

欧州・米国のガイドライン

8項目

日本人を対象におこなあわれた3つの心房細動の研究(J-RHYTHM Registry, Fushimi AF registry, Shinken Datebase)の統合解析(※Suzuki S, Yamashita T, Okamura K et al.Cir J 2015;79:432-438)では『CHA2Ds2-VASc Score』で追加された年齢(65-74歳)・血管疾患・女性は日本人の血栓塞栓症の有意な危険因子でなかったことから引き続きCHADS2 Scoreでの評価を行います。

CHADS2 Score

頭文字

危険因子

C

心不全

H

高血圧(治療中も含む)

A

年齢(75歳以上)

D

糖尿病

S2

脳卒中/TIAの既往

HAS-BLED Score

頭文字

危険因子

H

高血圧(収縮期血圧>160mmHg)

A

腎機能障害・肝機能障害

S

脳卒中

B

出血

L

不安定なワーファリンコントロール

E

高齢者(65歳以上)

D

薬剤(抗血小板薬・鎮痛剤)・アルコール

抗凝固薬と抗血小板薬の違い

血をサラサラにする薬と説明される薬は大きく分けて2つあります。

抗凝固薬

血液が固まる過程には、様々な血液凝固因子が関わっています。抗凝固薬は、これらの凝固因子の働きを阻害することで、血液の固まりにくさを増します。→血液を固めるためのタンパク質の働きを阻害します。

使用目的:心房細動や深部静脈血栓症など、静脈で血栓ができやすい方に使用されます。

DOAC

ダビガトラン

リバーロキサバン

アピキサバン

エドキサバン

ワーファリン(採血で投与量の調節が必要)

抗血小板薬

血小板は、血液が固まる際に重要な役割を果たす細胞です。抗血小板薬は、血小板が互いにくっつき合うのを抑制することで、血栓の形成を抑制します。→血小板がくっついて血栓を作るのを抑制します。

使用目的:狭心症や脳梗塞などの予防や、ステントに血栓が付かないようにする目的で使用されます。

 

特徴

アスピリン

昔からあります。胃粘膜障害に注意

パナルジン

血球減少など。最近は使用されることは少ない

クロピドグレル

脳血管障害の既往がある時に選択されやすい

シロスタゾール

他の薬剤がアレルギーなどで使いにくい時

脈拍を増やす効果を期待する時

プラスグレル

作用が迅速に出現。遺伝子多型の影響を受けにくい。

チカグレル

クロピドグレルやプラスグレルが使えない時に使用されます。

併用薬が多いほど出血リスクが高まります。心房細動と動脈硬化性疾患の併存されている患者さんでは使用する薬剤の選択に注意が必要です。

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