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血液検査・健診結果の考え方(基準値と管理目標値と受診勧奨基準)

血液検査の数値が気になる人必見!基準値と管理目標値と受診勧奨基準のちがいについて

はじめに

健康診断の血液検査の結果を見たとき、「基準値」「管理目標値」という言葉を目にしたことはありませんか?これらの数値は一見同じように見えますが、実は大きな違いがあります。これらの数値の意味と重要性を分かりやすく解説します。

基準値とは何か?

基準値とは、特定の集団の検査結果の95%が含まれる範囲であり、健康な人が多い標本集団を基に算出された血液検査結果の平均的な範囲を示す数値のことです。具体的には、同年代・同性の多くの人の検査結果から統計的に算出された標準的な値の範囲を指します。。ただし、基準値内にあることが必ずしも健康を保証するものではありません

例えば、中性脂肪の基準値は通常30〜150mg/dLとされていますが、これは健康な人の約95%が含まれる範囲を意味しています。基準値から外れているからといって、すぐに病気と診断されるわけではありません。※基準値の範囲は検査会社・年代によって異なる場合があります。

基準値はなぜ変わる?

血圧を例にして説明します。血圧の基準値は、医学的な知見や社会全体の健康状態に応じて、時代とともに変化してきました。たとえば、1960年代には血圧の基準値は一般的に「160/95 mmHg未満」とされていました。当時は、血圧が多少高くても問題視されにくく、高血圧による健康リスクが過小評価されていた時代です。一方、2000年代になると、動脈硬化や心血管疾患のリスクが血圧と強く関連していることが多数の研究で明らかになり、基準値は「140/90 mmHg未満」に引き下げられました。さらに、2010年代以降には、生活習慣病予防の観点から「正常血圧は120/80 mmHg未満」とされるようになり、より厳しい管理が求められるようになっています。

このように、血圧の基準値は、その時代における最新の医学的根拠や社会の健康意識の向上を反映して設定されるため、過去と現在では異なるのです。この変化は、医療の進歩とともに「未病」の段階で病気を予防する考え方が強くなっていることを示しています。

基準値の特徴
・統計的に算出された平均的な範囲
・健康な人の検査結果をもとに設定
・その時代や検査方法などによって変化する

管理目標値とは何か?

管理目標値は、より積極的な健康管理を目指すための理想的な数値範囲です。生活習慣病のリスクを最小限に抑え、将来の健康を守るために設定されています。

また管理目標値は基準値と異なり、個々の健康状態や既往歴、家族歴に基づき、基準値や管理目標値が異なります。そのため、医師との相談が重要です。

LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の場合

LDL 140mg/dL以上だと高コレステロール血症と判断されます(LDL 120~139mg/dLは境界型)。

管理目標値は患者さんの背景(既往歴・家族歴・他の病気など)によって異なります。一次予防や二次予防という考え方もあります。

一次予防:心血管疾患や脳梗塞(アテローム関連)のいずれかの既往が無い方を一次予防群とします。

二次予防:心血管疾患や脳梗塞(アテローム関連)のいずれかの既往がある方を二次予防群とします

一次予防の方は、リスクを評価して分類されたリスク別に目標値を確認します。

一次予防
リスク評価・かかっている病気 管理目標値(LDL mg/dL) 管理目標値(non-LDL mg/dL)
低リスク <160 <190
中リスク <140 <170
高リスク <120

<150

糖尿病・慢性腎臓病(CKD)・末梢動脈疾患(PAD)がある(高リスクに分類)

<120

<100※

<150

<130※

※(糖尿病かつ末梢動脈疾患・糖尿病合併症・喫煙歴のある人)

二次予防
リスク評価・かかっている病気 管理目標値(LDL mg/dL) 管理目標値(non-LDL mg/dL)
冠動脈疾患の既往

<100

<70※※

<130

<100※※

※※急性冠症候群(心筋梗塞・不安定狭心症)・糖尿病・家族性高コレステロール血症・アテローム関連の脳梗塞の場合

・糖尿病の場合

目標は、年齢・罹病期間・臓器障害・低血糖の危険性・サポート体制などを考慮して考えます。

65歳未満
目標 血糖正常化を目指す際の目標※① 合併症予防のための目標※② 治療強化が困難な際の目標※③
HbA1c 6.0%未満 7.0%未満 8.0%未満

※①適切な運動療法や食事療法だけで達成可能な場合や薬物療法中でも低血糖などの副作用なく達成可能な場合の目標

※②合併症予防の目標。対応するおおよその目安血糖値としては、空腹時血糖130 mg/dL未満、食後2時間血糖値180 mg/dL未満を目安とする。

※③低血糖などの副作用、その他理由で治療の強化が難しい場合。

※※いずれも成人に対しての目標値です。妊娠例ものぞかれます。

高齢者糖尿病(65歳以上)の血糖コントロール目標は「認知機能・ADL・併存疾患や機能障害」によって決定していきます。

重症低血糖が危惧される薬剤(インスリン製剤、SU薬、グリニド薬など)を使用している場合としていない場合でも65歳未満の方とは異なる目標値を設けます。

高齢者では低血糖発作を避けることが重要です。

管理目標値の特徴

・予防医療の観点から設定

・生活習慣病のリスク低減を目的

・より理想的な健康状態を示す

受診勧奨基準とはなにか?

健康診断やスクリーニング検査で異常が見られる場合、医療機関の受診を推奨するための基準。健康診断の実施基準に基づき、異常の可能性が高い値を設定しています。そのため受診勧奨基準は「医師の診察を受けるべきレベル」であり、基準値や管理目標値よりも明確な異常値として設定されています。

・血圧の受診勧奨基準は160/100 mmHg以上

・LDLコレステロールの受診勧奨基準は160 mg/dL以上

受診勧奨基準の特徴

・健康診断の実施基準に基づき、異常の可能性が高い値を設定

・医師の診察を受けるべきレベルであり、基準値や管理目標値よりも明確な異常値として設定

基準値と管理目標値と受診推奨基準の違い(まとめ)

①目的の違い

目的の違い
基準値 健康な人の統計的範囲を示し、現在の健康状態を把握する目安
管理目標値 病気の予防や治療を目的とした理想的な数値を設定
受診推奨基準 異常が疑われる場合に医療機関を受診すべき値を提示

②設定方法の違い

設定方法の違い
基準値 健康な集団のデータを基に統計的に算出(95%の範囲など)
管理目標値 医学研究やガイドラインに基づき、病気予防や治療効果を考慮して設定
受診推奨基準 健康診断基準に基づき、受診が必要とされる明確な異常値を設定

③個人の対応

個人の対応
基準値 範囲外であっても、直ちに治療が必要とは限らない。
管理目標値 値を達成するために生活習慣の改善や治療が推奨される
受診推奨基準 医師の診察や精密検査を早急に受ける必要がある

例:LDLコレステロール

  • 基準値: 140 mg/dL未満(健康な人の範囲)。
  • 管理目標値: 100 mg/dL未満(心血管リスクが高い患者の場合)。
  • 受診勧奨基準: 160 mg/dL以上(医師の診察が必要なレベル)。

これらは目的や適用範囲が異なるため、状況に応じて使い分けることが大切です。

実践的アドバイス

  1. 基準値だけで安心せず、管理目標値やリスクも考慮する。
  2. 健康診断で受診勧奨基準を超えた場合は速やかに医療機関を受診する。
  3. 個々の健康状態に応じた管理目標値を医師と相談して設定する。
  4. 定期的な検査で経年変化をチェックし、早期予防に努める。

おわりに

基準値・管理目標値・受診勧奨基準の違いを理解することで、血液検査結果を正しく解釈し、自分に合った健康管理が可能になります。数値の意味を正しく理解し、医師のアドバイスを活用して積極的に健康を維持していきましょう。

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