メニュー

睡眠時無呼吸症候群/睡眠呼吸障害の説明・検査・治療

睡眠時無呼吸症候群と睡眠呼吸障害の違い

睡眠時無呼吸症候群/睡眠呼吸障害のどちらも眠っているときに、「無呼吸(10秒以上呼吸が止まること)」の状態が1時間あたり5回以上、または、7時間の睡眠の中で30回以上ある場合に診断される病気です。
睡眠時無呼吸症候群は『自覚症状の存在を前提』としており主に、いびきや昼間の眠気、熟睡感がない、起床時の頭痛などの症状があります。英語でSleep Apnea Syndromeといわれ、SASと略して呼ばれることもあります。循環器内科学会では、『自覚症状の有無に関わらず』無呼吸低呼吸指数(apnea hypopnea index:AHI)に焦点を当てた研究が多く存在します。『自覚症状がなくても治療介入が推奨される』ため睡眠呼吸障害(sleep disordered breathing:SDB)と呼んでいます。

つまり『睡眠呼吸障害』の中に『睡眠時無呼吸症候群』が含まれます。

診断されにくい睡眠時無呼吸症候群・睡眠呼吸障害

睡眠中の出来事なのでご本人が自覚することよりも周囲の方に『いびき』がひどいなどの指摘で気がつかれることが多い疾患です。ご自身の自覚症状に関しては日中の眠気がわかりやすい症状となります。起きている時に眠気など自覚症状がある方は日常生活に支障をきたす事もあります。また放っておくと生活習慣病に罹りやすいとも言われています。症状に気がつきにくいため受診される頻度も少ないことから潜在患者(=診断されていない患者)は人口の2~3%と言われています。『いびき』『日中の眠気』『なかなか良くならない高血圧症』などがございましたら、ご相談ください。まずはご自宅でできる簡易検査で評価を行います。

いびきや無呼吸について

図のように空気の通り道(気道)が狭窄(いびき)・閉塞(無呼吸)するため血液中の酸素が低下します。低酸素血症は体に負担をかけるため様々な症状を示します。

睡眠時無呼吸症候群の症状

  • 就寝中の意識覚醒の短い反復、およびそれによる脳の不眠
  • 昼間の耐えがたい眠気
  • 抑うつ
  • 頻回の中途覚醒 集中力の低下
  • (家族などが気づく)睡眠時の呼吸の停止
  • (家族などが気づく)大きな鼾(いびき)など
  • (家族などが気づく)夜間頻尿(2型糖尿病になりやすくなる)
  • 起床時の頭痛
  • インポテンツ(女性の場合は月経不順)
  • のどが渇く
  • こむら返り

睡眠呼吸障害と生活習慣病の関係

睡眠呼吸障害(SDB)や睡眠時無呼吸無呼吸症候群(SAS)の患者さんは非睡眠時無呼吸症候群の患者さんと比べると生活習慣病リスクが高いことが報告されています。非睡眠時無呼吸の患者さんのリスクを基準にした場合、睡眠時無呼吸症候群の患者さんのリスクは下記程度とされています。

  高血圧 心疾患 脳血管障害 糖尿病
睡眠時無呼吸無呼吸 約2倍 約3倍 約4倍 約1.5倍

各心血管疾患における睡眠無呼吸障害合併頻度

全高血圧 薬剤耐性高血圧 糖尿病 急性冠症候群 慢性腎臓病

急性冠症候群

心房細動
59% 83%(AHI>10) 86% 49.6%(AHI>15) 65% 57% 81.4%
HFrEF(心不全)

HFpEF(心不全)

脳卒中 大動脈解離 胸部大動脈瘤 腹部大動脈瘤 肺高血圧
76% 69.3% 71%(AHI>5) 68% 63% 63.4% 89%

睡眠呼吸障害と交感神経について

睡眠呼吸障害と多くの病気をつなぐキーワードは交感神経

睡眠時無呼吸症候群が生活習慣病につながる理由を理解するキーワードは『交感神経』です!『交感神経』は運動したり興奮したりまた緊張状態などの時に働く神経です。反対にリラックスなど体を休める時に働く神経が『副交感神経』になります。しかし睡眠時無呼吸だと呼吸が止まってしまうため、体は低酸素血症など苦しい状態になるため呼吸を再開させるために『緊張の神経』である交感神経が働きます。

睡眠呼吸障害と高血圧

日中は『交感神経』が優位に働いて血圧を上昇させ、夜間やリラックスしているときは『副交感神経』が働いて血圧を下げます。睡眠時無呼吸だと呼吸が止まってしまうため、体は低酸素血症など苦しい状態になるため呼吸を再開させるために『緊張の神経』である交感神経が働きます。そのため夜間の血圧はもちろん日中の血圧も上昇させることに繋がります。降圧薬の反応が乏しい高血圧の原因とも言われています。

睡眠呼吸障害と心不全

心機能の低下した慢性心不全患者(HFrEF)の47%にAHI>15以上の睡眠呼吸障害を併発しており、心機能が維持された慢性心不全患者の31.8%にAHI>15以上の睡眠呼吸障害を併発。急性非代償性心不全患者の82%にAHI>15以上の睡眠呼吸障害を併発していると報告されています。

睡眠呼吸障害と糖尿病

睡眠呼吸障害によって生じる、『間欠的低酸素血症』『睡眠分断化』が『交感神経活性亢進』などを引き起こします。その結『糖代謝異常』・『インスリン抵抗性』を悪化させて糖尿病の発症に繋がります。

検査について

簡易検査

当院ではまずは、自宅で検査可能簡易モニター検査を行います。ご自宅に検査機器を持ち帰って頂き寝る前に機械をつけて頂きます。(装着イメージは図を参考にして下さい)※低呼吸無呼吸指数(AHI)・血中酸素飽和度低下指数(ODI)を測定します。簡易検査結果で治療適応が疑われる場合は精密検査(PSG)目的に連携施設(京都第一赤十字病院)へ紹介いたします。

PSG

PSGは入院で行います。簡易モニター検査との違いは①睡眠の質の評価(脳波)②無呼吸のタイプ分類(閉塞性無呼吸低呼吸指数:OAHI/中枢性無呼吸低呼吸指数:CAHI)③睡眠時周期性四肢運動数(むずむず脚症候群など)・・これらの検査結果は一部であり実際には心拍数など様々な結果を得ることが可能です。

治療について(機械治療)

①CPAP

図の様なマスク型の治療器具を装着することで気道の閉塞をふさぐことを予防します。使用当初は違和感が強いため治療を中止したいと思われる方が多いのですが、装着後1~2ヶ月すると自覚症状が改善されることを多く経験いたします。処方されてから慣れるまで少しご辛抱いただければと思います。

閉塞性睡眠障害の方に関するCPAP療法の効果
  1. 交感神経活性の抑制
  2. 炎症マーカーの低下作用
  3. 血管内皮機能改善作用
  4. 高圧作用
  5. 左室拡張能改善作用
  6. 夜間心筋虚血の改善
  7. 眠気の母以前
  8. QOL改善

②口腔内装置(oral aooliance)

軽症から中等症でCPAPが困難な患者様にはマウスピースを使った治療が適応となることがああります。専門的なマウスピースになりますので近隣の信頼できる医療機関をご紹介いたします。

治療について(生活習慣)

①減量

10%体重が増加するとAHIが32%増加し、10%減量するとAHIが26%減少することが報告されています。高度肥満症例では肥満外科手術の適応となるほど、睡眠呼吸障害と肥満は関連が深い病態です。

②禁煙

米国のデーターではありますが、現在喫煙中の方は非喫煙の方の4.4倍睡眠呼吸障害を発症しやすいと言われています。

③就寝前の飲酒の禁止

飲酒は呼吸中枢に影響を与えて、呼吸に影響を与えて睡眠呼吸障害を起こすと言われています。しかし通常の飲酒制限の効果は不明ですので『寝酒』を控えていただくことが重要です。

④眠剤

ベンゾジアゼピン系睡眠薬』は催眠作用(GABA-A-ω1受容体)+筋弛弛緩・抗不安作用(GABA-A-ω2受容体)を持ちます。筋弛緩作用が上気道の筋肉の緊張を低下させ気道閉塞の一因となる可能性があるため閉塞型睡眠障害の患者は服用を避ける方が良いと考えられます。異なる機序の睡眠導入薬としては『非ベンゾジアゼピン系:催眠作用(GABA-A-ω1受容体)』や『メラトニン受容体作動薬:体内時計のリズムを司どるメラトニンの作用を増強』や『オレキシン受容体拮抗薬:覚醒時に働いているオレキシンという物質をブロックして睡眠へ誘導』などへの変更を検討します。睡眠導入剤の使用・変更は睡眠呼吸障害の治療の効果は証明されていません。睡眠呼吸障害を悪化させないことが目的になります。

睡眠時無呼吸症候群セルフチェック(Epworth Sleepiness Scale:ESSエプワース眠気尺度)

下記の質問に答えることで睡眠時無呼吸症候群の可能性を調べることができます。すべての項目に答えて頂き合計点数が11点以上の場合は睡眠時無呼吸症候群が疑われますので、一度ご相談ください。

  ほとんど眠らない たまに眠る よく眠る ほとんど眠る
座って本を読む時
テレビを見ている時
会議や映画館、劇場などで静かに座っている時
座りながら手紙や書類を書いている時
座りながら人と会話をしている時
午後、横になり休んでいる時
昼食後、静かに座っている時
誰かが運転する車に同乗している時

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME