腎臓病について
腎臓について
腎臓は毎日①おしっこを作り(体液バランスの調整)②体の老廃物を外に出し③血を作るホルモンを賛成してくれる非常に大切な臓器です。しかし腎臓はなかなか症状を教えてくれない頑張り屋さんの臓器です。腎臓を働かせすぎ、気が付いたらもう働けない・・・となったら透析治療が必要になってしまい生活が一変します。透析治療は一般的に1回4時間の治療を週3回行う必要があり、また生命を維持するために行う治療ですので厳格な水分制限・食事制限が必要です。頑張りやさんの腎臓を大切にしませんか?
当院ではかかりつけ医として慢性腎臓病の管理を行います。腎臓はなかなか症状がでません。症状がでる時にはだいぶ働きが落ちていることが多いです。腎臓の働きが落ちている原因によって治療方法が異なります。当院では精密検査が必要と判断した方は総合病院へ紹介し腎臓内科専門医と連携した治療を行っております。病院で行う専門的な検査としては腎生検などがあります。
腎臓の数値が悪いと言われたことはありませんか?eGFR(推定糸球体濾過量)って何?
◎eGFR は「推定糸球体濾過量」という意味で、腎臓が1分間に血液をどのくらいろ過できるかを示しています。具体的には、腎臓の中にある「糸球体」と呼ばれる部分が、どれだけ効率よく血液をろ過しているかを示す指標です。
◎eGFRの単位は「mL/min/1.73㎡」で、これは「1分間にどれだけの血液(mL)がろ過されるか」を体表面積1.73平方メートルあたりで測定したものです。
◎eGFRは計算で求められます。通常、血液検査で測定される「血清クレアチニン値(Creatinine)」という物質の量を基に計算されます。クレアチニンは、筋肉から生成される老廃物で、腎臓によって血液からろ過されます。年齢、性別、体重、血清クレアチニン値などが用いられ、これらの情報から腎臓の機能(eGFR)を推定します。
新たな国民病~慢性腎臓病~
慢性腎臓病は、報告によりばらつきがありますが、日本人2000万人(20歳以上の5人に1人)が罹患している新たな国民病です。
かかりつけ医として~慢性腎臓病~
慢性腎臓病(CKD: Chronic Kidney Disease)は、腎臓の機能が徐々に低下していく病気です。腎臓は、体の中で重要な役割を果たす臓器で、主に血液をろ過して老廃物や余分な水分を尿として排出し、血圧の調整やホルモンの生成も行っています。慢性腎臓病は、これらの機能が徐々に失われることで、体にさまざまな影響を及ぼします。末期の状態まで進むと、血液を機械に通し、血液中の老廃物や不要な水分を除いて血液をきれいにする方法(血液透析療法)が必要になります。慢性腎臓病の進行はより早期に介入することで進行を緩やかにできることが報告されています。
慢性腎臓病の原因
1. 糖尿病: 日本では、糖尿病が慢性腎臓病の最も一般的な原因です。高血糖が腎臓の血管に負担をかけ、腎機能を低下させます。
2. 高血圧: 血圧が高いと腎臓の血管が傷つき、腎機能が低下します。
3. 糸球体腎炎: 腎臓のフィルターである糸球体に炎症が起こる病気で、これも腎機能の低下を引き起こします。
4. その他の要因: 遺伝的な要因、肥満、喫煙、過剰なアルコール摂取、長期間の薬剤使用などもリスク因子です。
慢性腎臓病の進行
Gansevoort RT.,de Jong PE.:J Am Soc Nephrol.20(3):465-468,2009
Alabama Department of Public Health:Specila TaskForce on Chronic Kidney Disease report.,April 2007を参考に作図
慢性腎臓病の進行は通常、以下の5つのステージに分類されます。ステージは、腎臓がどの程度機能しているかを示す指標である「推定糸球体濾過量(eGFR)」によって決まります。eGFR以外にも尿蛋白(高血圧・腎炎・多発嚢胞腎などに罹患)や尿アルブミン(糖尿病に罹患)なども影響します。
CKD stage | 説明 | eGFR値 (mL/min/1.73㎡) |
G1 | 正常または軽度の腎機能低下 | 90以上 |
G2 | 軽度の腎機能低下 | 60~89 |
G3a | 軽度~中程度の腎機能低下 | 45~59 |
G3b | 中等度~高度低下 | 30~44 |
G4 | 高度の腎機能低下 | 15~29 |
G5 | 腎不全(末期腎不全) | 15未満 |
慢性腎臓病の症状
慢性腎臓病の初期段階では症状がほとんど現れないことが多いです。しかし、進行するにつれて以下のような症状が現れることがあります。
- 疲れやすさ
- むくみ(特に顔や足)
- 尿の量や回数の変化
- 食欲不振や吐き気
- 高血圧
- 筋肉のけいれんや痛み
慢性腎臓病の管理と治療
1. 生活習慣の改善:
- 食事療法: 塩分の摂取を減らし、カリウムやリンの過剰摂取を避ける。
- 運動: 適度な運動で血圧を管理し、体重をコントロールします。
- 禁煙: 喫煙は腎臓への負担を増やします。
2. 薬物療法:
- 血圧の管理: 血圧を正常範囲内に保つための薬(ACE阻害薬やARBなど)。
- 糖尿病の管理: 血糖値をコントロールするための薬
- 腎保護: 糖尿病の治療薬だが心臓・腎臓を保護する薬(SGLT2阻害薬など)
- 腎炎の治療:専門的な検査・治療が必要となるので専門医へ紹介いたします。
3. 定期的な検査:
- 腎機能の定期的な検査(血液検査、尿検査)を行い、進行をモニターします。
- 血尿+蛋白尿+腎機能低下の時は腎炎を疑いますので専門医へ紹介を検討します
4. 腎代替療法:当院では行えません。病院もしくは透析専門のクリニックでの治療となります。
- 腎機能が非常に低下した場合、透析や腎移植が必要になることがあります。)
上記は透析のイメージ図です
慢性腎臓病の予防
慢性腎臓病の予防には、早期発見とリスク要因の管理が重要です。定期的な健康診断を受け、糖尿病や高血圧をしっかりと管理することが、病気の進行を防ぐための鍵となります。慢性腎臓病の進行のスピードが個人によって異なります。適切な管理と治療を行うことで、進行を遅らせることが可能です。
慢性腎臓病は初期には症状が出にくいですが、進行すると生活に大きな影響を及ぼします。したがって、定期的な検査と早期の管理が非常に重要です。疑わしい症状があれば、早めに医療機関を受診し、適切な対応を取るようにしましょう。
腎臓の病気の一部をご紹介
慢性腎臓病:CKD: Chronic Kidney Disease | 腎臓の機能が徐々に低下する病気で、糖尿病や高血圧が主な原因です。進行すると腎不全に至ることもあります。 |
急性腎不全:AKI: Acute Kidney Injury | 急激に腎機能が低下する状態で、重篤な感染症、脱水、ショック、薬剤などが原因となります。適切な治療により回復することもあります。 |
糸球体腎炎:Glomerulonephritis | 腎臓の糸球体というフィルター部分に炎症が起こる病気で、血尿やタンパク尿が主な症状です。原因には自己免疫疾患や感染症が含まれます。 |
多発性嚢胞腎:Polycystic Kidney Disease, PKD | 腎臓に複数の嚢胞(液体で満たされた袋)ができる遺伝性の病気で、腎臓が大きくなり、機能が低下します。 |
腎硬化症:Nephrosclerosis | 長期間の高血圧によって腎臓の血管が硬くなり、腎機能が低下する病気です。進行すると慢性腎臓病の原因となります。 |
IgA腎症:IgA Nephropathy | 免疫グロブリンA(IgA)が糸球体に沈着し、慢性的な炎症を引き起こす病気です。血尿やタンパク尿が見られ、慢性腎臓病に進行することがあります。 |
腎結石:Kidney Stones | 腎臓内に固形の石(結石)が形成される状態です。結石が尿路を塞ぐと激しい痛みを引き起こし、血尿や感染症のリスクも高まります。 |
腎動脈狭窄症:Renal Artery Stenosis | 腎臓への血流を供給する動脈が狭くなる病気で、高血圧や急性心不全・腎不全を引き起こすことがあります。 |
ループス腎炎:Lupus Nephritis | 全身性エリテマトーデス(SLE)という自己免疫疾患による腎臓の炎症。 |
腎臓の病気は多岐にわたり、それぞれ異なる原因や症状を持っています。これらの病気を予防するためには、定期的な健康チェックとリスク要因(高血圧、糖尿病など)の管理が重要です
腎生検について(当院では行っておりません)
腎臓の病気の診断や治療方針を決定するために、腎臓の一部の組織を採取して詳しく調べる検査です。腎生検は、腎臓に関するさまざまな病気の原因や状態を明確にするために行われます。
腎生検の目的
①病気の原因を調べる: 血尿やタンパク尿がある場合、その原因を特定するために腎生検が行われます。
②病気の進行度を確認する: 腎臓病の重症度や進行具合を評価するために、組織の状態を詳しく調べます。
③治療の効果を判断する: すでに治療を始めている場合、その効果を確認するために腎生検を行うことがあります。
腎生検の方法
①仰向けに寝た状態で、腎臓の位置を超音波で確認します。
②小さな針を使って、腎臓の一部からごく小さな組織片を採取します。超音波のガイドを利用して正確に針を腎臓に刺します。
より詳しい内容に関しては紹介先の腎臓内科専門医にご相談ください。